まさか雨が降るなんて思わなかった。
あなたは私を家の前まで送ると言ってくれたけれど、申し訳なかった。私たちは二人とも傘を持っていないし、近くのコンビニまで傘無しで歩くのも躊躇するような大雨だった。わたしの家は駅から近いが、さすがにずぶ濡れになってしまう。
コンビニまで行こうと決めて歩き出した。駅の近くにコンビニはなく、少し歩かなければならない。
歩いてずぶ濡れになってしまうとだんだんと全てがどうでも良くなってきた。
私は「Singing in the rain」を口ずさんだ。口ずさみながら水たまりを蹴り上げた。靴がびしょ濡れになってしまってもどうでもよかった。
あなたと目が合った時、時が止まったのかと思った。そのまま私たちは引き寄せられるように唇を重ねた。その瞬間世界は止まった。あの時世界には私たちしかいなかった。私たち以外は全て、わたしたちを引き立てるだけの付属品でしかなかったのだ。
この日を境に私は雨が好きになった。